葬式の多くは宗教者が主導する宗教的儀礼として行われ、宗教が違えば葬儀のかたちや手順も変わり、宗派が違えば作法も違うものになります。葬儀は故人の信仰や、喪家が属している宗教、宗派の宗教者、手順、作法によって行われる必要がある為、故人や自分の家の宗教、宗派について把握しておく事が大切になります。宗教、宗派によって作法、手順が異なるのは、それぞれの死生観に基いて伝統的に形作られて来ているからです。例えば、仏教の場合は亡くなった人は来世で仏の弟子になるとされ、神道では火葬、埋骨後も霊魂が先祖の霊とともに家にとどまり、家族の守り神になるとされます。

こうした死生観の違いが、葬儀での儀式にも反映され、仏教の禅宗の場合は死者に仏弟子となる為の戒律を授けて引導する儀式が、神式の場合は故人の霊魂を神として祀る儀式が中止となります。日本人の多くは、普段から特定の宗教、宗派への帰依や信仰意識を持っていませんが、我々の日常生活には宗教と深く結び付いた文化や習慣が多く存在します。例えば、仏教と結び付いた習慣として、春分の日、秋分の日という暦の節目や、8月中旬の盂蘭盆会のお盆休み等が挙げられます。また、神道から生じた習慣には清め塩があり、清めや祈願の為に塩を使う盛り塩等は古くから私達の日常で行われてきた事です。

このように、私達の日常生活に深く影響を及ぼしている様々な宗教の死生観に出会い、改めて意識する機会としても、葬儀は大きな意味を持っています。